Brand Design lab.
ブランドデザイン研究所
ブランドアイデンティティの作り方|「誰に・何を・なぜ選ばれるか」を一文にする方法
ブランドづくりの方程式
2026/9/8

「うちの会社らしさって、結局なんなんですかね」
先日、福岡市内で電材卸業を営む社長さんとお話ししていたときのことです。3C分析でお客様のことも、競合のことも、自社の強みも、ヒアリングを重ねてかなり言葉にできてきた。なのに、いざパンフレットやホームページのトップに載せる一文を考えようとすると、手が止まってしまう。
これ、実はとてもよくあるご相談です。「みつける」フェーズで集めた情報はたくさんある。でも、それを一文に凝縮する作業だけがぽっかり抜け落ちている。今日は、そのらしさを凝縮した「ブランドアイデンティティの作り方」についてお話しします。
ブランドアイデンティティとは何か
まず言葉の整理から始めましょう。ブランドコンセプトとは、簡単に言えば「誰に・何を・なぜ選ばれるか」「お客様にどう思われたいか?」を一文にまとめたものです。
私たちは、ブランドづくりを「選ばれる理由(ブランドアイデンティティ)× デザイン」という方程式で考えています。この「選ばれる理由」を構築するプロセスが「みつける・つくる・そだてる」とは?中小企業のためのブランドづくりの方程式で紹介した「みつける」フェーズです。

ブランドアイデンティティは、その「みつける」で集めた情報――お客様のこと、競合のこと、自社のこと――を、デザインに移す直前に一本の言葉に絞り込む作業だと考えてください。ロゴのデザイン、WEBサイトのキャッチコピー、名刺の一言、採用ページの見出し。これから作るすべてのアウトプットが、この一文から枝分かれしていきます。逆に言うと、ここが曖昧なまま先にデザインへ進んでしまうと、担当者ごとに解釈がバラバラになり、出来上がったものに一貫性がなくなってしまうのです。
なぜ「一文」にする必要があるのか
「別に箇条書きのままでもいいのでは?」と聞かれることがあります。気持ちはよくわかります。でも、一文にする理由は明確です。
一つは、社内での合言葉になるからです。経営者の頭の中にしかない「らしさ」は、社員には伝わりません。しかし「私たちは〇〇な人に、〇〇を、〇〇だから選ばれる」という一文があれば、朝礼でも、面接でも、取引先への説明でも、同じ言葉で会社を語れるようになります。これは、経営理念が社員に浸透しない理由|インナーブランディングの実践法でも触れている、インナーブランディングの土台になる部分です。
もう一つは、デザインの意思決定基準になるからです。ロゴの色を決めるとき、WEBサイトの写真を選ぶとき、「このコンセプトに合っているか」という一つのモノサシがあれば、社長の好みやデザイナーの感覚だけで議論が発散することを防げます。
ブランドコンセプトのつくり方・3つの手順
では、実際にどうやって一文まで絞り込んでいくのか。私たちが現場で使っている考え方を、なるべくシンプルにお伝えします。
手順1:3つの要素を書き出す
まず、次の3つの問いに、それぞれ一言か二言で答えてみてください。
誰に:
あなたの会社が、本当に喜んでほしいお客様はどんな人・どんな会社か
何を:
その人に対して、具体的に何を提供しているか(商品やサービスそのものではなく、その先にある変化や状態)
なぜ:
数ある選択肢の中で、なぜあなたの会社でなければならないのか
このとき大切なのは、格好つけないことです。「誰にでも」「高品質なものを」「真心を込めて」といった、どの会社にも当てはまる言葉は一旦脇に置いてください。むしろ「うちは正直、こういうお客様とは相性が良くない」というところまで踏み込んで考えると、輪郭がはっきりしてきます。
この考え方は、差別化できない会社の共通点|3C分析でみつける独自ポジションでも詳しく紹介しています。
手順2:3つを一文につなげてみる
3つの要素が出そろったら、多少無理やりでいいので一文につなげてみます。
「〇〇(誰に)に対して、〇〇(何を)を提供している。なぜなら〇〇(なぜ)だから。」
こんな形の骨組みで構いません。最初から美しい言葉である必要はありません。ここではまだ「素材」を組み立てている段階です。むしろ最初はぎこちなくて当然だと思ってください。
| スタジオグラムのブランドコンセプトの事例 |
私たちスタジオグラムの場合、この3つを整理すると次のようになります。
誰に:
事業承継や周年、リブランディングなど、会社が次のフェーズへ進もうとしている福岡の中小企業。
何を:
その会社がお客様から選ばれている理由を見つけ、言葉とデザインで伝わる状態にする。
なぜ:
ブランド戦略からロゴ、WEB、そしてその後のブランド運用まで一貫して伴走できるから。
こうして分解してみると、「福岡の中小企業を、次のフェーズへ導くブランディング。」という私たち自身の方向性も、単なるキャッチコピーではなく、「誰に・何を・なぜ」という考え方からつながっていることがわかります。
実際のブランドづくりではどう考える?
例えば、福岡県糸島市を拠点に庭づくりを手がけるコレール株式会社様では、独立開業にあたり、まず「誰に、どんな価値を届ける会社なのか」を整理するところからブランドづくりを始めました。
約25年の経験や、お客様との関わり方を掘り下げる中で導き出したのが、「時を紡ぐ、思い出になる庭づくり。」というブランドの軸です。この言葉を起点に、WEBサイト、名刺、リーフレットなどへ一貫して展開しています。
手順3:削って、削って、研ぎ澄ます
一文ができたら、そこから言葉を削っていきます。目安として「これ以上削ると意味が通じなくなる」というギリギリのラインまで削ぎ落とすイメージです。
削る際の判断基準は、「この言葉、競合他社も同じことを言えてしまわないか?」です。もし言えてしまうなら、それはまだ本当の「選ばれる理由」になっていません。もう一段、自社ならではの言葉に置き換えられないか考えてみてください。
なお、この一文をさらに人に伝わりやすい形に磨いていく作業は、キャッチコピーやタグラインづくりに近づいていきます。その具体的な技術については、キャッチコピー・タグラインのつくり方|一言で「らしさ」を伝える技術で改めて解説しています。
ありがちな失敗パターン
現場でよく見かける、つまずきやすいポイントを2つ挙げておきます。
一つは、「誰に」を広げすぎてしまうことです。「中小企業の経営者全般」のように対象を広げると、結局どの言葉も薄まってしまいます。年商規模、業種、抱えている悩みの深さまで、思い切って狭める方が、該当する人に深く刺さる言葉になることが多いです。
もう一つは、社長一人で完結させてしまうことです。社長にとっての「当たり前」は、社員やお客様から見ると意外な魅力だったりします。可能であれば、営業担当や、実際にお客様と接する社員の意見も聞きながら言葉を組み立てることをおすすめします。
コンセプトができたら、次にすること
一文が固まったら、それで終わりではありません。むしろそこがスタートラインです。ロゴのデザイン、WEBサイトの構成、名刺のデザインなど、「つくる」フェーズのすべての判断基準として、このコンセプトを使い続けてください。
そして一度作って終わりにせず、事業環境やお客様の変化に応じて定期的に見直すことも大切です。理由は、ブランドは「そだてる」ものだからです。
一文にまとめる作業は、思っている以上に時間がかかります。何日も、時には何ヶ月も社内で言葉を練り続ける会社もあります。それだけ、会社の根っこに関わる大切な作業だということです。
もし自社だけで進めるのが難しいと感じたら、外部の視点を借りるのも一つの方法です。私たちがどのようにヒアリングを進め、コンセプトまで言語化していくのかについては、無料の小冊子でも詳しく紹介しています。
[ 小冊子ダウンロードページへ ]
「みつける、つくる、そだてる|お客様に選ばれ、愛され続けるブランドづくりの方程式。」
みつける つくる そだてる
お客様に選ばれ、愛され続けるブランドづくりの方程式。

・ブランドって何?
・マーケティングとどう違うの?
・デザイン会社って何をしてくれるの?
・お客様に選ばれるために何すればいいの?
そんな疑問にお答えする小冊子を代表早野が書きました。
創業16年・50社を超える継続クライアントと1000件を超える案件から導き出した「ブランディングを成功に導く方程式」を無料でお届けします。
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この記事を書いた人
早野 悠
Hayano Yu

株式会社スタジオグラム 代表取締役
ブランドマネージャー認定協会トレーナー
コミュニケーションノイズを無くし、争いのない社会を目指してブランディングに取り組んでいます。福岡市を拠点に、3ステップでつくるブランディング×マーケティング手法で述べ60社をお手伝いしてきました。
好きな言葉:知足/縁起
好きなこと:国内海外旅行/写真/温泉/散歩
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