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NTT:40年間守り続けたロゴを刷新して見えた「ブランドの連続性」という力

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NTT:40年間守り続けたロゴを刷新して見えた「ブランドの連続性」という力

ブランドを読み解く

2026/8/26

こんにちは、スタジオグラムです。

固定電話が当たり前だった時代に生まれたロゴが、2025年に40年ぶりに刷新されました。NTTのコーポレートアイデンティティ(CI)の変更です。

社名を「日本電信電話株式会社」から「NTT株式会社」に改め、ロゴのカラーを黒から青へと変えたこの出来事は、ブランドデザインの観点からとても多くのことを教えてくれます。

「変える」ことと「守る」ことのバランスを、NTTは40年をかけてどのように考えてきたのか。今回はその視点で読み解いていきます。調べていく中で、私たちにとっても多くの学びがありました。

NTTとは?

NTT(日本電信電話株式会社)は、1985年に電電公社の民営化によって誕生した日本最大の通信グループです。NTTドコモ、NTTデータなど約1000社の子会社を持ち、社員数は約34万人にのぼります。

そのうち約半数が海外拠点で働いており、もはや国内の通信会社という枠を大きく超えた存在です。モバイル通信、ITビジネス、不動産、エネルギーと事業は多岐にわたりますが、長年にわたって「日本電信電話」という社名を使い続けてきました。

2025年7月1日、40年目にしてついに「NTT株式会社」へと商号を変更し、グループ全体のCIを刷新しました。


ブランドデザインの視点で読み解く

視点1:誰に向けたブランドか。国内と海外のギャップを埋める一手

今回のCI刷新で最も注目したいのは、「誰に向けたメッセージか」という点です。NTTは国内ではすでに圧倒的な認知を持つブランドです。しかし海外では事情が異なります。

「日本電信電話株式会社」という正式名称は、英語圏や欧米市場では非常に伝わりにくく、固定電話事業を連想させるイメージが障壁になっていました。

グローバル市場において「NTTとは何者か」を正確に伝えるためには、名称そのものを整理する必要があったのです。

ターゲットを「国内の既存顧客」だけに設定していれば、社名変更もCI刷新も必要なかったかもしれません。しかし成長を見据えたとき、「海外の取引先・採用候補者・投資家」にも届く言語が必要になる。これは規模に関係なく、すべての企業が向き合うべき問いです。

私たちも福岡の中小企業のブランドをご支援する中で、「誰に、何を伝えるためのブランドか」を最初に整理することの重要性を強く感じています。ターゲットが変われば、ブランドの語りかける言葉も変わります。

視点2:ロゴの造形。「ダイナミックループ」を40年後も継承した理由

今回のロゴ刷新で最もブランドデザイン的に興味深いのは、1985年に策定されたシンボルマーク「ダイナミックループ」が継承されたという点です。これをデザインしたのは、日本グラフィックデザインの巨匠・亀倉雄策氏。

一本の曲線でダイナミズムを表現し、上部の小さなループに「常にお客さまや社会の声を原点として吸収し、広く社会の役に立っていこうという企業姿勢」を込めたデザインです。

変更されたのはカラーのみ。黒から「NTTブルー」と名付けた青へと統一されました。海外グループ各社がすでに使用していたカラーを国内でも採用し、グローバルで見たときの統一感を取り戻す判断です。

「守るべきものと、変えるべきものを分ける」。ここにブランドデザインの核心があります。40年で事業は大きく変わりました。それでも、亀倉氏が一本の線に込めた哲学は変わっていない。
だからこそシンボルを守り、時代に合う言語(色とフォント)だけを更新する。この判断は、ブランドが持つ「連続性」への深い敬意から生まれています。

無印良品が長年にわたって「これがいい、ではなくこれ『で』いい」という軸を守り続けることで顧客の安心感を生んでいることとも、同じ原理を感じます。無印良品のブランドコアについて詳しく読み解いた記事もあわせてご覧ください。

視点3:コンセプトが語ること。「一本の曲線」に込められた哲学

「一本の曲線により企業のダイナミズムを表現する」。この言葉は、1985年のデザイン発表から変わっていません。40年後に刷新された公式発表でも、同じ表現が使われています。

これがブランドアイデンティティの強さです。企業の規模や事業内容がどれだけ変わっても、「何を象徴しているか」がブレない。デザインは見た目ではなく、哲学を視覚化するものです。

NTTの場合、その哲学は「社会とつながり続ける企業姿勢」であり、一本の曲線がそれを今日も語り続けています。

また、若手社員が6チームに分かれてCI刷新の検討に参加したという事実も注目に値します。「ブランドは経営者が決めるもの」という発想ではなく、未来を担う社員が自分たちのブランドとして関わる設計になっている。
ブランドへの内部的な理解と愛着を育てる、非常に丁寧なプロセスです。

私たちはブランドづくりの現場で、「社員がブランドを自分のものとして語れるか」が、外への伝わりやすさにも直結すると実感しています。
ブランドは経営者だけのものではなく、組織全体で育てるものだということを、NTTの事例は改めて示してくれています。

視点4:グループへの展開と統一感の設計

約1000社の子会社を持つNTTにとって、CI刷新は単なるロゴ変更ではありません。グループ全体に「同じシンボルを使う」という意思決定です。

NTTデータはグループに統合された国内事業でも新シンボルを採用、NTTドコモは自社カラーのレッドをシンボルに組み合わせることで独自性を保ちながら統一を図っています。
これは、ブランドガイドラインの設計そのものです。「共通ルールを守りながら、各社の個性を許容する範囲を決める」。

このバランスが取れているとき、グループ全体が一枚岩のブランドとして機能します。逆にバラバラな展開を許してしまうと、顧客から見たときに「結局どういう会社なのか」が見えなくなります。
中小企業においても、ロゴを名刺・Webサイト・封筒・SNSでそれぞれ違う使い方をしているケースは少なくありません。

統一ルールを定めて一貫した運用をするだけで、会社全体の印象は大きく変わります。NTTの事例は、規模を問わず「ブランドは一貫して使われるときに価値を持つ」ことを教えてくれます。


このブランドから中小企業が学べること

今回NTTの事例を調べていく中で、私たちも改めて気づかされたことがあります。それは「変えることへの勇気」と「守ることへの覚悟」は、どちらも同じ深さで必要だということです。

NTTが40年間シンボルマークを変えなかったのは、時代に鈍感だったからではありません。それだけの哲学が、そのデザインの中に宿っていたからです。一方、色とフォントという「語り口」は時代に合わせて更新することを選びました。

中小企業経営者の皆さんに問いかけたいのは、「あなたの会社のロゴや名前の中に、守り続ける哲学がありますか?」ということです。

もしそれがあるなら、変えるべきでないものを守りながら、時代に合った言語へと翻訳することがブランドの仕事です。逆に、創業時のデザインに哲学が込められていないと感じるなら、今こそ「何のために自分たちはここにいるのか」を問い直す機会かもしれません。

事業承継のタイミング、周年記念、新事業立ち上げ。そういった節目は、ブランドをただ更新するのではなく、「次の40年に引き継ぐものは何か」を考える絶好の機会です。

NTTが若手社員を巻き込んでCI刷新を進めたように、未来を担う人たちと一緒にブランドを育てる視点も、これからの時代には欠かせないものになるでしょう。
あなたの会社では、ブランドに込める哲学を言葉にできていますか?


出典

みつける つくる そだてる
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この記事を書いた人

早野 悠

Hayano Yu

株式会社スタジオグラム 代表取締役
ブランドマネージャー認定協会トレーナー

コミュニケーションノイズを無くし、争いのない社会を目指してブランディングに取り組んでいます。福岡市を拠点に、3ステップでつくるブランディング×マーケティング手法で述べ60社をお手伝いしてきました。

好きな言葉:知足/縁起 
好きなこと:国内海外旅行/写真/温泉/散歩

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