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丸亀製麺:「手づくり、できたて」の哲学が生んだ、外食ブランド1位の秘密

Brand Design lab.

ブランドデザイン研究所

丸亀製麺:「手づくり、できたて」の哲学が生んだ、外食ブランド1位の秘密

Type Something

2026/7/29

こんにちは、スタジオグラムです。

商業施設の中を歩いていると、ガラス越しに麺を打つ白衣姿のスタッフが見えてきます。
思わず足を止め、「ここは打ちたてのうどんが食べられるんだ」と感じた経験はないでしょうか。
丸亀製麺の店舗では、うどんを作る工程そのものが「見せ場」として設計されています。

今回はこのブランドを、ブランドデザインの視点から読み解いていきます。
Japan Branding Awards 2025で最高賞のGOLDを受賞し、外食部門で高い評価を受け続ける丸亀製麺が、なぜここまでお客様の心をつかみ続けるのか。
調べていく中で、私たちにとっても多くの学びがありました。

丸亀製麺とは?

丸亀製麺は、トリドールホールディングスが運営するセルフサービス式の讃岐うどんチェーンです。
2000年11月、兵庫県加古川市で1号店をオープンしました。

創業者であり、現在もトリドールHD代表取締役社長を務める粟田貴也氏が、讃岐のある製麺所で麺づくりの現場に感動した体験を起点に、「手づくり・できたての感動体験を全国に届ける」ことを決意したのがブランドの始まりです。

2025年3月期時点で、国内861店舗・海外307店舗(MARUGAME UDON)を展開し、丸亀製麺単体で1,168店舗に達しています。
売上収益は丸亀製麺単体で約1,281億円、トリドールグループ全体では2,682億円にのぼります。

Japan Branding Awards 2022ではBest of the Best(最高位)を、2025年には再びGOLD(最高賞)を受賞し、日本を代表するブランドの一つに数えられています。
創業から25年、外食産業のブランドとして一貫した成長を続けています。

ブランドデザインの視点で読み解く

誰に向けたブランドか:「日常の価格帯で、本物の手づくり体験を」

丸亀製麺のターゲットは、「日常の食事として、本物の手づくり体験を求める人」です。
一見シンプルに見えますが、外食チェーンとしては大胆なポジション設定です。
ファストフードでありながら、「効率」よりも「体験の本物感」を前に置く姿勢は、業界の常識とは真逆の方向でした。

一般的なチェーン店は、セントラルキッチン(集中調理場)で商品を大量に調製し、各店舗に配送する方式をとります。
コスト効率に優れた手法ですが、「どの店も同じ味・同じ温度・同じプロセス」になりやすい側面があります。

丸亀製麺はあえて逆の選択をしました。
全店舗で小麦粉・塩・水だけを使い、粉から麺を打つという手間のかかる方式を、チェーン全体で維持しているのです。

この「非効率」な選択が、ブランドの最大の強みになっています。
「全国どこに行っても、目の前で打たれた麺が食べられる」という体験は、セントラルキッチン方式では決して生まれません。
均一さと引き換えに「生きた製麺所の体験」を守るという判断が、競合との明確な差をつくってきました。

私たちが福岡のクライアントとブランドの方向性を話し合う際にも、「何を大切にして、何を手放せるか」という問いを大切にしています。
選ばれる理由をデザインするという視点】から見ると、丸亀製麺が「手放さなかったもの」こそが、他のチェーンとの根本的な違いをつくっていることが見えてきます。

ロゴ・カラー・タイポグラフィ:和の伝統美と「職人の場」を可視化する

丸亀製麺のロゴは、赤地に白抜き文字というシンプルな配色です。
書体は隷書体(れいしょたい)と呼ばれる書体です。

中国の漢代に生まれ、日本では長く看板・のれん・印章に使われてきた伝統的な文字の形で、現代のチェーン店の多くがゴシック体やサンセリフ体を採用するなかで、あえて隷書体を選んでいることに、明確な意図が感じられます。

ロゴには「讃岐釜揚げうどん」と「丸亀製麺」が2段組みで配置されています。
この構成は、商業施設のテナントサインとしては非常に個性的です。
周囲の洗練されたブランドと並んでも、「ここはうどん屋だ」「製麺所のような場所だ」という印象を一瞬で届けることができます。

粟田貴也氏はこう語っています。「製麺所の風情を手放したら丸亀製麺ではなくなる」。
この言葉は、ロゴの書体選びにも体現されています。

隷書体の持つ「手仕事感」「伝統感」は、「手づくり、できたて」というブランドアイデンティティと完全に一致しています。
赤いロゴの色も、「食欲」を刺激する色として機能しながら、「丸亀製麺のシンボルカラー」として全国に認知されています。

デザインは見た目の選択ではなく、思想の可視化です。
その原則を、丸亀製麺のロゴはシンプルに証明しています。

コンセプト・メッセージ・ブランドアイデンティティ:「生きている」という言葉の力

「ここのうどんは、生きている。」

丸亀製麺のタグラインです。
このわずかな言葉に、ブランドのすべてが凝縮されています。

「生きている」は、うどんの鮮度(打ちたて・ゆでたて)を意味するだけではありません。
その店で、その瞬間に生まれる食体験の「いのち」をも示唆しています。
コピーライティングとして見ても、余白を持ちながら深く刺さる表現です。

ミッションは「Simply For Your Pleasure.(すべては、お客様のよろこびのために)」、スローガンは「食の感動で、この星を満たせ。」です。


外食チェーンのコピーとは思えないほどスケールの大きな言葉ですが、これが丸亀製麺のブランドコアの本気度を示しています。

うどんを売ることよりも先に「感動を届ける」ことを目的に置くというメッセージは、ブランドのすべての判断軸になっています。

私たちがクライアントのブランドアイデンティティを言語化する作業をするとき、「それはなぜ存在するのか」「誰の何を変えたいのか」という問いを大切にしています。


デザインはコミュニケーションの手段です。
しかし、その前に「何を伝えるか」が明確でなければ、どんなビジュアルも力を持ちません。

丸亀製麺は、抽象的な「感動体験」を、具体的な食の体験に接続することに成功した好例として、私たちの仕事の参考になり続けています。

顧客接点の設計:見えるキッチン、感じる人、伝わるブランド

丸亀製麺の顧客接点の中で最も特徴的なのは、オープンキッチンです。
店に入ると、麺を打つ音・粉の香り・湯気が立つ釜が目に飛び込みます。

こうした五感への刺激が、「手づくり、できたて」という約束を毎回証明し続けます。
お客様はただうどんを食べるのではなく、「製麺所に来た」という体験を受け取っているのです。

ユニフォームも意図的な設計です。
白衣に三角巾のスタッフは、「工場の無機質さ」ではなく「近所のお母さんが打ってくれる温かさ」を演出しています。
セルフサービス形式でありながら、スタッフとの距離感を縮める効果があります。

ロゴの書体が持つ「伝統的な手仕事感」と同じ世界観が、ユニフォームにも店舗空間にも揃えられています。

2025年のJapan Branding Awards GOLDを獲得した評価ポイントも見逃せません。
Interbrand Japanは「心的資本(Psychological Capital)経営の構造化」を高く評価しました。

「ハピカンオフィサー制度」によって従業員(EX:Employee Experience)の幸福度が高まり、顧客体験(CX:Customer Experience)が向上し、業績に結びつくという好循環です。
ブランドは店頭のサインやパッケージだけでつくられるものではなく、働く人の内側から伝わるものでもあることを、丸亀製麺は体現しています。

このブランドから中小企業が学べること

今回、丸亀製麺の事例を調べていく中で、私たちも改めて気づかされたことがあります。
それは、「ブランドアイデンティティは、手放してはいけない」という当たり前の原則の、奥深さです。

丸亀製麺は861店舗を超えても、セントラルキッチンを使いません。
コスト合理化の誘惑に屈することなく、「すべての店で粉から打つ」という手間を守り続けています。

その一見不合理な選択こそが、ブランドの信頼性を支えているのです。
「製麺所の風情を手放したら丸亀製麺ではなくなる」という粟田氏の言葉は、そのままブランドを守る本質を語っています。

中小企業のブランドを考えるとき、「もっと効率化しなければ」と感じる場面は多くあります。
しかし、効率化してはいけない部分があります。
それがそのブランドの「選ばれる理由」であることも少なくありません。

丸亀製麺の「製麺所の風情」は、コスト以上の価値をお客様に届けています。

また、「ハピカン制度」が示すように、ブランドは外向きのビジュアルだけでは成立しません。
スタッフが誇りを持って働いているか、その誇りが接客を通じてお客様に伝わっているか。
これは規模に関係なく、すべての企業に当てはまります。

ロゴをきれいにしても、名刺を整えても、そこに働く人の姿勢が伴っていなければ、ブランドは機能しません。

あなたの会社では、「これだけは絶対に手放せない」と言えるものが、ありますか?

出典

みつける つくる そだてる
お客様に選ばれ、愛され続けるブランドづくりの方程式。

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この記事を書いた人

早野 悠

Hayano Yu

株式会社スタジオグラム 代表取締役
ブランドマネージャー認定協会トレーナー

コミュニケーションノイズを無くし、争いのない社会を目指してブランディングに取り組んでいます。福岡市を拠点に、3ステップでつくるブランディング×マーケティング手法で述べ60社をお手伝いしてきました。

好きな言葉:知足/縁起 
好きなこと:国内海外旅行/写真/温泉/散歩

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