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ケンタッキー・フライド・チキン / 55周年「第二創業」が教えてくれる、節目のブランド転換という決断。

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ブランドデザイン研究所

ケンタッキー・フライド・チキン / 55周年「第二創業」が教えてくれる、節目のブランド転換という決断。

ブランドを読み解く

2026/4/3

こんにちは、スタジオグラムです。

先月、KFCが新しいタグライン「しあわせに、ガブッ。」を発表しました。テレビCMを見て、「なんか変わったな」と感じた方も多いのではないでしょうか。

じつはこの変化、単なるキャッチコピーの刷新ではありません。創業55周年と新社長就任を機に「第二創業」を宣言した、会社全体の意志表明なのです。経営者として「節目」を迎えたとき、どう動くべきか。KFCのブランド転換は、そのひとつの答えを見せてくれます。

ケンタッキー・フライド・チキンとは?

日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社は、1970年7月に三菱商事とKFCコーポレーション(米国)の合弁で設立されました。同年11月、名古屋市西区に日本1号店をオープンし、以来55年にわたって日本の食卓に親しまれてきた企業です。

現在の店舗数は全国1,339店、チェーン売上高は約1,760億円(2024年3月期)にのぼります。2024年9月に上場廃止・TOBを経て、株式会社クリスピーの傘下に入り、同年11月には遠藤久氏が新代表取締役社長CEOに就任しました。この新体制のもとで、2026年3月に発表されたのが「第二創業」というブランドの大転換です。

ブランドデザインの視点で読み解く

「特別な日のKFC」から「日常のKFC」へ / ターゲットの再定義

KFCといえば「クリスマスチキン」

この刷り込みは強力で、売上のピークが12月に集中してきたのは広く知られた事実です。しかし遠藤社長は「第二創業」の場で、こう語っています。

「何気ない朝も、昼も、夜も。平日も、休日も。ひとりでも、家族や仲間とでも。ふと立ち寄る日常の中でも、いちばん心が動く時間をつくりたい。」

これはターゲット設定の根本的な見直しです。
「クリスマスにKFCを食べる人」から「日々の生活でKFCを選ぶ人」へ。顧客像を変えることで、接触頻度・年間売上・ブランドとの関係性すべてが変わります。

スタジオグラムが中小企業のブランド構築に関わる中で、同じような課題に何度も出会います。「うちのお客さんは年に一度しか来てくれない」「記念日やお祝いのときだけ選ばれる」という声です。

こうした場合、商品やサービスそのものを変えるより先に、「誰に、どんな場面で選ばれるブランドでありたいか」を問い直すことが出発点になります。KFCの転換は、その問いに55年かけて正直に向き合った結果と言えます。

ターゲットを再定義するとき、重要なのは「誰かを排除する」のではなく「誰かをより強く迎え入れる」という発想です。KFCはクリスマスを捨てたのではなく、日常という新しい文脈を加えたのです。

「ガブッ」という音が語るブランドの本質 / コピーとビジュアルの読み解き

新タグライン「しあわせに、ガブッ。」を読んで、最初に気づくのは「ガブッ」というオノマトペの存在感です。

これは非常に意図的な選択だと感じます。「ガブッ」という言葉には、遠慮のなさ、躊躇のなさ、そして一瞬で幸福に浸れる感覚があります。KFCが持つ体験の核心——骨つきチキンにかぶりつく瞬間——を一語で表現しています。

遠藤社長はこの言葉にこう込めています。

「おいしいものにかじりついた時に、しあわせがじゅわーっと満ちあふれるあの瞬間を込めている。」

ロゴマークのカーネル・サンダース自体は変更されていません。55年かけて積み上げてきた認知資産を守りながら、ブランドのトーンとコミュニケーションを刷新するという戦略です。

ロゴを変えることがブランドリニューアルではない。どんな言葉で語り、どんな体験を届けるかがブランドの本質だという考え方が、ここに表れているように感じます。

同時に発表された新スローガン「人生、ガブッといったもん勝ち。」は、もっと大きなメッセージを持っています。チキンを食べることを超えて、「積極的に生きる姿勢」を肯定する言葉です。ブランドが製品の外側にある生き方や価値観と接続したとき、人は単なる「消費者」ではなくなります。「このブランドが好きだ」という感情が生まれる瞬間がここにあります。

「なぜ変えるのか」を先に語る / ブランドコアとコミュニケーションの設計

デザインは見た目ではなく、コミュニケーション手段です。私たちがこの言葉を大切にしているのは、デザインが「伝えたいこと」を形にする行為だからです。KFCの「第二創業」は、まさにこの哲学を体現しています。

新ビジョン「こだわりの食体験で、お客さまの期待を超えつづける」というのは、一見シンプルに見えますが、重要なのは「食体験」という言葉の広さです。味覚だけではない。香り、食感、店舗空間、サービス。五感すべての体験をデザインすると宣言しているわけです。

遠藤社長が発表の場でこう語った言葉も印象的です。

「世界情勢やコスト構造など、外食業界を取り巻く環境は大きく変わっている。これまでの延長線だけでは勝てない。次の成長フェーズに向けてゲームチェンジを起こしていく。」

ここで私たちが学ぶポイントは、順番です。
「何を変えるか」より先に「なぜ変えなければならないのか」を語っています。危機意識を正直に言語化してから、変革の内容を発表する。この順番が、社内外への信頼性を高めます。

ブランドのリニューアルを検討している経営者の方は、「何を変えるか」のリストを作る前に、「なぜ今変えなければならないのか」という一段落の文章を書くことから始めてみてください。それが書けたとき、変えるべきものと変えてはいけないものが自然に見えてきます。

店舗・デジタル・広告 / 一貫した体験の設計図

「第二創業」の内容を詳しく見ると、ブランドコミュニケーションの刷新が複数の接点で同時に設計されていることがわかります。

店舗では、2026年4月に神奈川県相模原市で次世代モデル店をオープンします。グローバルのKFCデザイン基準を採用した空間で、テイクアウト中心から「滞在したくなる場所」への転換を図ります。2030年までに全国1,700店舗体制を目標に、この新モデルを横展開する計画です。

デジタルでは、KFCアプリをブランドの中核に位置づけ、購買履歴や生活習慣データをもとにAIで個別のコミュニケーションを届ける仕組みを導入。ポイントプログラムのステージリセットも廃止し、「来てくれるお客さまを手放さない設計」へ変えています。

広告では新ブランドアンバサダーに佐藤栞里さんを起用し、「しあわせの天才」篇という新CMで「何気ない日常の幸福感」を演出しています。ここでも一貫したメッセージがあります。「特別感」ではなく「日常の小さな喜び」という文脈です。

実に現代らしいなと感じます。
モノも情報も飽和している今、忙殺されながら遠くの理想郷を追いかけることも大事だけれど、足元の喜びや幸せにも目を向けませんか?という提案ですね。

これらはバラバラに見えて、すべてが「日常に選ばれるブランド」というひとつの意志から発しています。接点が多様になるほど、ブランドのコアが明確でないとメッセージが散漫になります。KFCの場合、「しあわせに、ガブッ。」というひとつの言葉が羅針盤として機能していることで、店舗・デジタル・広告の設計に一貫性が生まれています。

私たち中小企業が学べること

KFCが今回示した最も大きな学びは、「節目は変革を正当化する力を持っている」という事実です。55周年という節目と新社長就任というタイミングを使って、「第二創業」という言葉を掲げた。これにより、社員にも顧客にも、「なぜ変わるのか」ではなく「変わるのは当然だ」というムードが生まれます。

私たちのクライアントには、創業10周年・20周年・30周年のタイミングで問い合わせをいただくことが少なくありません。そのタイミングには、実は大きな可能性が眠っています。「創立○周年」はただの記念ではなく、ブランドの再定義を社会に向けて宣言できる大事な機会だからです。

KFCが「特別な日のブランド」から「日常のブランド」へ転換しようとしているように、あなたの会社のブランドにも「これまでどう見られてきたか」と「これからどう見られたいか」のギャップがあるかもしれません。そのギャップを放置していると、既存顧客との関係は安定しているように見えても、新規顧客に届かず、じわじわと縮んでいくリスクがあります。

中小企業だからこそ、意思決定が早く、経営者自身の言葉でブランドを語れます。
「なぜ今変えるのか」を経営者自身が語れるかどうかが、ブランドリニューアルの成否を分けます。

もし「なぜ今、変わらなければならないのか」という問いへの答えがぼんやりしているのでしたら、一度お話しをお聞かせください^^

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この記事を書いた人

早野 悠

Hayano Yu

株式会社スタジオグラム 代表取締役
ブランドマネージャー認定協会トレーナー

コミュニケーションノイズを無くし、争いのない社会を目指してブランディングに取り組んでいます。福岡市を拠点に、3ステップでつくるブランディング×マーケティング手法で述べ60社をお手伝いしてきました。

好きな言葉:知足/縁起 
好きなこと:国内海外旅行/写真/温泉/散歩

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