Brand Design lab.
ブランドデザイン研究所
ガリガリ君:「くだらなさ」を貫く赤城乳業のブランド戦略
Type Something
2026/6/24
こんにちは、スタジオグラムです。
今回取り上げるのは、赤城乳業の「ガリガリ君」です。
1981年の発売以来40年以上、子どもから大人まで感され続けている
ロングセラーのアイスキャンディです。
年間販売数4億本以上という国民的ブランドでありながら、
そのマーケティングは「お金をかけずにくだらないことをやり続ける」という
一見矛盾した戦略で貫かれています。
大手企業の事例でありながら、その本質は規模に関係なく、
あらゆるブランドに通じる普遍的な示唆を持っています。
今回このブランドを調べていく中で、私たちにとっても多くの学びがありました。
ガリガリ君とは?

赤城乳業株式会社は、1961年に埼玉県深谷市で創業したアイスクリームメーカーです。
「ガリガリ君」は1981年に当時50円で発売されました。
開発コンセプトは明快で、「子どもが自分のお小遣いで買えるアイス」です。
発売から40年以上が経った現在も、そのコンセプトは変わっていません。
2024年3月には原材料費の高騰を受け8年ぶりに10円の値上げ(70円→80円・税別)を実施しましたが、それでも「手の届く価格」というブランドの根幹は守られています。
コアターゲットは一貫して小中学生に据えながらも、独自のコミュニケーション戦略で幅広い世代に支持を集め、2021年のアイス人気調査(約700万人対象)では堂々の2位を獲得しています。
ブランドデザインの視点で読み解く
誰に向けたブランドか:「永遠の小学生」というターゲット戦略
ガリガリ君のターゲットは発売当初から一貫して「小中学生」です。
しかし、年間4億本以上を売り上げているのは子どもだけの購買力ではありません。
赤城乳業が生み出したのは、「子どもを主役にすることで大人をも自然に巻き込む」という巧みな設計です。大人はガリガリ君を食べる自分に懐かしさと親しみを感じ、自然と手が伸びます。
子ども時代に刷り込まれたブランド体験が、大人になっても購買行動につながる。
この「ブランドロイヤルティの世代継承」とも呼べる現象が、一貫したターゲット設定によって可能になります。
キャラクターも商品コミュニケーションも、
徹底的に「顧客の目線より上にならない」ことを意識して設計されています。
赤城乳業のマーケターはこう表現しています。
「顧客の目線以上にならないように、という立ち位置をベースにした商品開発やマーケティングを続けてきたことが、共感を持たれている要因だ」と。
ターゲットを明確に定め、その視点に徹底的に寄り添い続けることの力が、
ガリガリ君を国民的ブランドに成長させました。
私たちがブランドの設計をお手伝いするとき、「誰に向けて話しかけるか」を最初に定めることをとても大切にしています。
ターゲットが曖昧なブランドは、誰にも刺さらないメッセージしか発信できません。
ブランドにとってターゲットを決めることは、同時に何を「しない」かを決めることでもあります。
ブログ記事:選ばれる理由をデザインするとはどういうことか、ぜひあわせて読んでみてください。
ロゴ・カラー・キャラクター:「嫌われキャラ」を40年間貫く勇気
ガリガリ君のキャラクターは、
ぼこぼこした頭部、ぶた鼻、むき出しの歯という独特の外見を持っています。
かつては「嫌いなキャラクターランキング」に入るほど不評だった時期もありました。
しかし赤城乳業はキャラクターの大規模なリニューアルを行いませんでした。
理由はシンプルです。この「癖のある外見」こそが小中学生の感性に合致しており、
「いじりやすい」「面白い」という独特の親しみやすさを生んでいるからです。
2000年にデザインの一部が改訂されましたが、キャラクターの根本的な「くだらなさ」は
変えませんでした。
ブランドにとって、デザインの正解は必ずしも「かわいい・きれい・洗練されている」では
ありません。
ターゲットの感性とブランドの世界観に合致していれば、
一見クセの強いデザインでも強力なブランド資産になります。
カラーは鮮やかなブルーとオレンジを基調にしており、
アイス売り場での視認性の高さを確保しています。
特に「ガリガリ君レインボー売り場」と呼ばれる施策では、
ソーダ・コーラ・梨など異なる味のガリガリ君を7種類横に並べることで、
売り場に虹のような色彩を生み出し、自然と目を引くディスプレイを実現しました。
追加コストほぼゼロで視覚的なインパクトを最大化するこの発想は、
予算に限りのある中小企業にとっても大いに参考になるはずです。
コンセプト・ブランドコア:「くだらなさ」という確固たる世界観
赤城乳業のスローガンは「あそびましょ。」です。
この6文字に、ガリガリ君ブランドのすべてが凝縮されています。
コーンポタージュ味、ナポリタン味、シチュー味など、食べものとしての「おいしさ」よりも
話題性と遊び心を優先した商品を次々と発売してきました。
ナポリタン味は約3億円の損失を出したとされています。
それでも担当マーケターは「失敗しちゃったな」と笑いながら語ったといいます。
売上だけを指標にしない、ブランドの世界観を守ることを優先する姿勢が、
この言葉によく表れています。
「元気で、楽しく、くだらない」という企業文化が社内に浸透しており、
誰がどんな企画を考えても「ガリガリ君らしさ」から外れない
ブランド判断の基準が共有されています。
私たちがブランドアイデンティティ(お客様にどう思われたいか?)の設計をお手伝いする際、
この「そのブランドらしい判断基準」を言語化することをとても重視しています。
ガリガリ君にとっての基準は「くだらないか・楽しいか・元気が出るか」です。
この基準が組織に根付いているからこそ、一貫したブランド体験が40年以上生まれ続けているのです。ブランドとは、デザインのルールブックである前に、「チーム全員の判断基準」なのだと改めて感じさせられます。
顧客接点の設計:「話題そのもの」をメディアにする発想
ガリガリ君の広告費は競合他社と比較して極めて少ないとされています。
それでも常に話題になり続けているのはなぜでしょうか。
答えは「話題になる出来事をつくること」を戦略の中心に据えているからです。
最も象徴的なのが、2016年の「値上げお詫びCM」です。
1991年から25年間据え置いてきた価格をついに10円値上げしたとき、
赤城乳業は社長と約100名の社員が深々と頭を下げる映像を
テレビでたった3回だけ放映しました。
その後の拡散施策は一切行いませんでしたが、
公式YouTubeで150万回以上再生され、SNSで国内外に広まり、
広告賞を総なめにしました。
制作費約15万円ほどで5億円以上の広告効果を生んだともいわれています。
2024年の2度目の値上げ(70円→80円)でも、
8年前のお詫びCMのリメイク版を発表しました。
社員のお辞儀がさらに深くなった続編は、またたく間に話題となりました。
失敗も、値上げというネガティブな出来事も、
すべてがブランドのコミュニケーションの一部として機能しています。
長年にわたって信頼を積み上げてきたブランドだからこそ、謝罪広告が「好感度アップ」につながるのです。これは一朝一夕で作れるものではなく、ブランドコアへの長年の一貫した投資があってこそ成立します。
このブランドから中小企業が学べること
今回ガリガリ君の事例を調べていく中で、私たちも改めて気づかされたことがあります。
「強いブランドとは、何かを足し続けることではなく、何かを貫き続けることだ」ということです。
赤城乳業は業界最大手ではありません。
しかし「くだらなさ」「あそび心」「手の届く価格」という
3つのブランドコアを40年以上一度もぶらしませんでした。
キャラクターが不人気でも変えない。
損失が出ても奇抜な商品を出し続ける。
値上げのたびに頭を下げる。
これらはすべて、ブランドとしての一貫性から生まれた判断です。その一貫性が積み重なることで、消費者との深い信頼関係が育まれ、多額の広告費をかけなくても話題になり続けるブランドが完成しました。
福岡の中小企業のブランドづくりをお手伝いする中で、私たちがよく受ける相談のひとつに「うちはまだ小さいし、ブランドなんて大企業の話では?」というものがあります。
しかしガリガリ君の事例が示すのは逆です。
小さな会社だからこそ、ブランドのコアを明確に定め、それを貫く覚悟があれば、大きな広告費がなくても顧客の心に深く刺さるブランドを育てることができます。
重要なのは規模ではなく、「何を?、 誰に?、 どう届けるか?」という軸の明確さです。
あなたの会社は、何を「くだらなくても貫く」ことができるでしょうか?
出典
ガリガリ君のブランド戦略(CBOラボ) — https://cbo-media.com/lab/garigari
データのじかん:ガリガリ君マーケティング戦略 — https://data.wingarc.com/garigari-kun-marketing-strategy-44923
ガリガリ君に学ぶ値上げの作法(日経クロストレンド) — https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00151/00037/
ガリガリ君が40歳(日経クロストレンド) — https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00151/00036/
赤城乳業公式:2024年値上げのお知らせ — https://www.akagi.com/news/2024/240301.html
みつける つくる そだてる
お客様に選ばれ、愛され続けるブランドづくりの方程式。

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この記事を書いた人
早野 悠
Hayano Yu

株式会社スタジオグラム 代表取締役
ブランドマネージャー認定協会トレーナー
コミュニケーションノイズを無くし、争いのない社会を目指してブランディングに取り組んでいます。福岡市を拠点に、3ステップでつくるブランディング×マーケティング手法で述べ60社をお手伝いしてきました。
好きな言葉:知足/縁起
好きなこと:国内海外旅行/写真/温泉/散歩
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