102歳の老翁が生み出すオブジェの価値。

とある雑貨屋さんにて。
「このオブジェが気になりますか? 」と店員さんに声をかけられた。

これは、、、

バリ島のウブドに住む齢102歳の老翁。
村の誰も近寄らない山奥の小さく古い小屋で日々”ろくろ”を回し続ける。

早朝5時からお昼過ぎの14時まで、朝食も昼食も取らずに、目の前でくるくる回る「土」と会話するように向き合いながら「かたち」をつくってゆく。この47年間、1日も欠かすことなく繰り返される時間はある種の祈りの儀式のようだ。

老翁が毎日つくり出すのは、「うつわ」や「つぼ」や「オブジェ」。
これらは、1日にひとつだけこの世に産み落とされる。

14時になるとその日の仕事が終わった合図として、老翁は土をまとった両手を合わせ、少しだけこすり合わせて細かい粉を宙に落とし、静かに目を閉じて大地に一礼する。
そしてつくった「うつわ」や「つぼ」や「オブジェ」を大事に抱え山を降りる。

30分ほどかけて山を降りた麓には、翁がその手でつくった小さな焼き窯がある。その窯の中には1ヶ月分、だいたい30個ほどの「うつわ」や「つぼ」や「オブジェ」が所狭しと並んでいる。

老翁はその日つくった「オブジェ」を窯の一番近い棚にそっと置き、両の手のひらで「オブジェ」の表面を3回撫で、窯の扉を何度か押したり引っ張ったりしながらそっと閉めた。

これから火起こしの準備がはじまる。

___今目の前にある物は、その老翁が1996年12月24日につくった世界に一つだけの「オブジェ」です。

 

という説明をもし受けたとしたら、私はその「オブジェ」を買うだろう。

どう使うかなんてわからないけれど、オブジェを見るたびに、バリ島のウブドの山奥で毎日”ろくろ”と向き合う102歳の老翁の姿が脳内に浮かぶ。そのスイッチを手に入れたというだけで私は満足だ。

物を買うかどうかの判断は、その裏側に潜む物語りと繋がっている。

店員さんからこんな話を聞けたら素敵なお店だなぁと通いたくなるだろうなぁ。